就活コラム

2019/06/12

「企業を探すうえでの財務の見方」

「この企業のサービスってとても便利だけど、どうやって利益を上げてるのかな?」

「成長著しいって書いてあるけど実際どれくらいの成長をしているのかな?」

企業の公開している財務諸表を読むことでこれらの疑問を自分で解消することができます。

インターンや就活をしていく中で気になる企業が出てくることでしょう。それらの気になる企業が、いったいどのような業績なのか、今後数年で倒産してしまうことはないのか、いったいどんなビジネスモデルで業績を上げているのかなどは、なかなか企業の紹介ページを見てもわかりません。しかし、各企業が公開している財務諸表を読むことで上に書いたような疑問を解消していくことができます。また、企業の財務報告なんてどこにあるのかわからない…という方へ、あまり見ないかもしれませんが多くの場合、上場企業のHPにIR情報または決算報告などとしてページがあるので確認してみましょう。(非上場企業には公開義務がないため載っていないこともあります。)

 では財務諸表は一体どのように読んでいけばいいのでしょうか。簿記を勉強したことがなかったとしても、簡単にわかる読み方を紹介します。

 

そもそも財務諸表って何?

財務諸表は端的に言うと、「経営状況を数字に翻訳したもの」です。こんなことを急に言われても意味が分からないですよね、詳しく解説していきます。財務諸表はいくつかの財務書類から成り立っており、現在の財務状況や一年間の財務状況の動きを示しています。その企業の財務に関する「今」と「これまで」を読み取ることで、経営状況がどのように変化してどうなっているのかを知ることができます。では、どのように読み取っていくのかについて、財務諸表にはいくつかの項目がありますが、今回はその中でも代表的な

・貸借対照表

・損益計算書

・キャッシュフロー計算書

の3つについて紹介していきます。

 

貸借対照表について

貸方 借方
流動資産

200

流動負債

70

固定負債

50

資本

(純資産)

160

固定資産

80

左図のような、貸方借方に分かれている表を貸借対照表(Balance sheet 以下B/S)と呼びます。B/Sの特徴は企業の財務状況の今を示していることです。期末段階での企業の資産や負債、資本がわかると何が読み取れるのでしょうか。ここで注目したいものは

・自己資本比率

・流動比率

・当座比率

の3点です。それぞれ解説していきます。

 

◆自己資本比率

自己資本比率の計算式は「自己資本比率(%)=自己資本/総資産×100」です。

この計算式が意味することは、企業の持っている資産のうち自らの資産、返さなくても良い資産をどれだけ持っているのかです。図表からわかるように、企業の持つ資本は負債を増やすことによって大きくすることができます。しかし、負債つまりは返さなくてはいけないもの(借金や社債など)を多く持っている状況では、経営資源を周りに依存しており不安定な経営といえます。逆に、この自己資本比率が高ければ高いほど企業は自力で経営資源を保っているということなので、倒産のリスクも小さいと言えます。

 一般的に、この自己資本比率が40%を超えていると倒産しにくいといわれているので、企業のB/Sを見る際の一つの指標として参考にしてみてください。

 

◆流動比率

 流動比率の計算式は「流動比率(%)=流動資産/流動負債×100」です。

※流動資産例:現金、在庫、売掛金など

 流動負債例:短期借入金、買掛金など

 「流動」という言葉は「短期的に処理可能な」と言い換えるとわかりやすいかと思います。つまり流動比率は、短期的な期間で処理可能な資産と短期的な期間で処理しなくてはならない負債の比率を表しています。それなので、流動比率が高いほどその場での支払い能力が高いということがわかります。逆に、流動比率が低かった場合、その企業は短期的に支払わなければならないものに対する支払い能力がないことを意味します。

 一般的に、200%あれば十分といわれていますが150%あたりが目安となるでしょう。企業の事業形態によって左右されることもありますが、黒字倒産などのリスクを気にするうえでも注目したい指標です。

 

◆当座比率

 当座比率の計算式は「当座比率(%)=当座資産/流動負債×100」です。

※当座資産は流動資産の中でもよりすぐに現金にしやすい、現金や預金、売掛金などです。

 当座比率が何を示しているのかというと、流動比率をより厳密に示したものが当座比率になります。前項で説明した流動資産にはすぐに現金化しやすいものだけでなく、売れることで初めて現金になる在庫なども含まれています。そこで問題になるのは、その在庫は一体いつからあるものなのでしょうか。売れずに何年も残り続けている在庫が増えていくだけでも、流動比率は上がってしまいます。そこで、当座比率という指標を用います。

 当座比率は100%以上が望ましいといわれており、もし流動比率が高いにも関わらず当座比率が100%未満など低い数値を記録している場合は気を付けましょう。

 

損益計算書

金額例
売上高 5,000
売上原価 3,000
売上総利益 2,000
販売費および一般管理費 1,000
営業利益 1,000
営業外収益 50
営業外費用 100
経常利益 950
特別利益 20
特別損失 30
税引き前当期純利益 940
法人税等 40
当期純利益 900

 

 損益計算書(Profit and Loss Statement 以下P/L)は企業の財務リソースの流れを示しています。企業にとっての利益は「利益=収益―費用や損失」となっており、P/Lを読み取ることで、企業がいつどこで利益を上げているのかを把握することができます。また、P/Lは5つの種類の利益を用いて段階的に企業の利益の状態を示しています。では、5種類の利益からそれぞれでどのようなことがわかるのでしょうか。その他の用語も含めて以下で解説していきます。

 

◆売上総利益

「売上総利益=売上高―売上原価」で表されます。一般には粗利と呼ばれたりもする指標です。この売上総利益は企業の核となる商品やサービスによる売上高から、それらの商品やサービス提供にかかった費用である売上原価を差し引いたものになります。

 

▶売上高

 売上高は実際に商品やサービスの受け渡しが完了した時点で金銭のやり取りが発生するため、売上高が記録されるタイミングと、現金がやり取りされるタイミングには多少のタイムラグが発生します。また、売上高は単純な単価と売上数の積から算出されるため、売上高が高いだけで、利益率が低い可能性もあるので、売上高のみを見て業績がいいかどうかを判断するのは危険です。

 

▶売上原価

 当期に仕入れた商品にかかっている製造時などにかかった費用です。売上総利益は売上高と売上原価の差ですので、この売上原価が低ければ低いほど売上総利益は大きく成ります。なお、注意点として、この売上原価は当期の仕入れ分しか反映されないので、前期からの繰越になった分の仕入れ含まれません。

 

◆営業利益

「営業利益=売上総利益―販売費および一般管理費」から算出されます。ここからわかることは、売上総利益によって算出された額から、経営や営業活動に必要な経費を引くことで現実的に営業で得られる利益を知ることができます。

 

▶販売費および一般管理費

 これは、企業が商品やサービスを提供していく中で、一つ一つの商品ごとでかかるわけではない普遍的な費用のことです。販売費は広告などが例として挙げられ、一般管理費では企業のオフィスの家賃や働く従業員の給与などが当てはまります。

 

◆経常利益

「経常利益=営業利益+営業外収益―営業外費用」から算出されます。経常利益は企業の本業である事業内容での利益に、本業外での収益や費用に加え金利などを反映させて企業としての利益を読み取ることができます。

 

▶営業外収益

 企業の本業以外での収益のことで金利が主な内容です。口座に預けていた預金や貸付金から発生する受取利息や、保持している株券などから発生する有価証券利息が代表例として挙げられます。

 

▶営業外費用

 企業の本業以外で、継続的に発生する費用のことです。財務活動から発生するケースが多く、借入金の支払利息や株の売却損の額などもここに含まれます。また、営業外収益と合わせて営業外損益と呼ばれることもあります。

 

◆税引き前当期純利益

「税引き前当期純利益=経常利益+特別利益―特別損失」から算出されます。このことから読み取れることは、企業が払わなくてはならない法人税などが反映される前の、当期の利益です。

 

▶特別利益

 特別利益は企業の事業活動以外で臨時的に発生したもので、継続的には発生しない利益のことです。通常では発生せず、当期にたまたま発生した利益であり、その企業の安定的な収益ではないためこの特別利益を見て企業の業績が良いと判断するのは危険です。主には、オフィスの移転による固定資産売却益や、長期間保持していた株の売却による有価証券収益などが考えられます。

 

▶特別損失

 特別損失は、偶発的に企業に大きな損失が発生したときに計上される損失です。継続的ではなくあくまで偶発的に発生しているためここから業績が低いとは判断できませんが、大きな損失が発生しており、資産内なのかそれとも、あまりにも大きすぎる損失のためリスクがあるかは見誤らないようにする必要があります。また、具体例としては、オフィスの移転に伴う固定資産売却損や、自然災害や事件に巻き込まれて発生する損失などが挙げられます。

 

◆当期純利益

「当期純利益=税引き前当期純利益―法人税等(法人税+法人住民税+法人事業税)」から算出されます。この計算により企業が様々な費用を取り除いた当期での利益を読み取ることができます。

 

▶法人税等

 上の式のように法人税、法人住民税、法人事業税の合算のことです。

 

以上のように多少複雑に見えるかもしれませんが、一つ一つを見ていくことで企業がどこで利益を上げ損失をしてしまっているのかを読み取ることができます。

 

キャッシュフロー計算書

P/Lではお金の動きを知ることがでると述べましたが、企業によって何を営業外費用と勘定するのかや特別利益とするのかによっては見え方が大きく変わってしまいます。そこで、現金の移動に着目したのがキャッシュフロー計算書(Cash Flow 以下C/F)です。見方としては、企業にどれだけ現金があるのかを示したものになるので、家計簿を読むような使途で見るようにしていくと良いと思われます。

C/Fは以下の3つのキャッシュフローから成り立っており、それぞれについて解説していきます。

◆営業活動によるキャッシュフロー

本業によってどれだけ儲けたのかを示しています。P/L上で黒字でも、ここで赤字を計上していると現金不足ということです。そのような企業は、黒字倒産するリスクもあるので注意しましょう。

 

◆投資活動によるキャッシュフロー

固定資産や株など未来のために使ったお金のことを示しています。企業の成長や、業績を上げるためには投資は必要不可欠ですので、どれだけ将来に向けて現金を使ったのかがわかります。

 

◆財務活動によるキャッシュフロー

借りたお金や返したお金を表しています。返済をしていくことでマイナスになり、借入をしていくとプラスになっていくので、マイナスの企業が一般的に優良企業といわれています。しかし、決してプラスが悪いわけではなく、投資するために借入をすることもあるので、他のキャッシュフローを見ていくことがポイントです。

 

C/Fを見るうえでの注意点は3つ挙げられます。

・営業によるキャッシュフローがプラスになっているのか

本業がプラスでなければ、その企業の業績は怪しいものです。P/Lが黒字になっていれば、それは企業がごまかした可能性もあるので気を付けて読みましょう。

 

・事業投資のための投資活動によるキャッシュフローなのか

将来の成長のために投資することは企業が成長していくうえで必要な支出になります。企業や事業内容の成長のために必要な投資かどうか見極めましょう。

 

・営業によるキャッシュフローが投資によるキャッシュフローよりも大きいのか

投資はもちろん大事ではありますが、その投資に見合うだけの経営体力があるのかどうかは非常に大事です。企業の財力に見合った無理しすぎた投資をしていないのかを注視する必要があります。

 

まずは慣れることから

なかなか慣れるまでは、難しい言葉が並んでいるように感じて食わず嫌いがあるかもしれません、しかし、実際に企業の財務諸表を見ながら、この記事と照らし合わせてみるとこれまで全く分からなかった財務諸表を理解することができるのではないでしょうか。

就活やインターンでの企業選びの一つの観点として企業の財務状況もぜひ参考にしてみてください。

 

メモ:

貸借対照表参考リンク

https://info.isi-grp.co.jp/blog/grandit/balance-sheet-3points 

 

損益計算書資料

https://www.smbc-card.com/hojin/magazine/bizi-dora/accounting/profit.jsp

 

全体的にわかりやすい資料

http://www2.meijo-u.ac.jp/~onishi/zaimus9/g2.html